自然、神、地球
「自然、神、地球」と題された今回のコンサートは、新体制となったTKWOの初の定期演奏会。その幕開けにふさわしい壮大なテーマであり、当然ながらそれに即したプログラムにはスケールの大きな作品が並ぶ。交響曲、あるいは交響的とされた作品で占められており、大編成「交響吹奏楽」の輝きが味わえよう。
開幕を飾る「地球」は、言わずと知れた名匠・真島俊夫がTKWOのために2011年に作曲したもの。今シーズンよりTKWOは過去の委嘱作品の再演を積極的に行なっていくことを発表しており、これが定期演奏会での初回となる。「美しき惑星」という副題を持つ、壮麗なオープナーだ。
ランセンは27歳のときに権威ある作曲賞であるローマ大賞の第2位を受賞しているフランスの作曲家。吹奏楽作品を多数残しているが、サクソルン属が使用されているフランス式の編成から日本で実演に接する機会は少ないので、今回はその響きにも要注目だ。「水の交響曲」では水が雨となり、川となり、海に注ぎ、再び空に昇る循環が描かれる。
その「水の交響曲」を捧げられているのが、同じくフランスの女流作曲家ゴトコフスキー。強靭な生命力を持つ作品群で知られており、代表作である「炎の詩」はその最たるもの。比較的演奏機会に恵まれているこの曲をTKWOも2014年にレコーディングしているが、それから10年経ってどのように再燃するか、楽しみだ。
そしてメインとなるのがスパーク「交響曲第1番」。サブタイトルの「大地、水、太陽、風」は古代ギリシアより唱えられる、世界を構成する四大元素「土・水・火・風」のことで、その通り4つの楽章を持つ大作だ。なお、この「大地」は原題では「earth」。ここにきて、コンサート全体のプログラムが四大元素をなぞっており、この曲が「wind」にして全てを包括し帰結することに気づくだろう。
今回、タクトを握るのはTKWOの定期演奏会には二回目の登場となる横山奏。2シーズン連続の出演は珍しく、TKWOからの信頼の厚さが窺えよう。横山は近年、各地の管弦楽団とも共演を重ねている俊英だが、2017年にオランダ・ケルクラーデで開催された吹奏楽の祭典WMCにおける指揮コンクールで入賞、中学生の頃は吹奏楽部で打楽器を担当していたこともあり、吹奏楽にも造詣が深い。そんな横山の趣味は登山。日頃から大自然と対話を重ねてきた横山は、今回のテーマに打ってつけだ。横山が描く響きの頂から広がるパノラマは、新しい吹奏楽の地平を拓いてくれることだろう。
〈敬称略〉
中橋愛生(TKWO楽芸員)
第1回TKWO吹奏楽カフェ②「第164回定期演奏会」アーカイブ動画