第171回定期演奏会
英国吹奏楽の祭典- 日時
- 2025年11月23日(日)
開演14:00(開場13:00) - 場所
- 東京芸術劇場 コンサートホール
- 指揮
- ダグラス・ボストック
- 曲目
-
フローリッシュ/R.ヴォーン・ウィリアムズ
「ハマースミス」プレリュードとスケルツォ/G.ホルスト
ウィリアム・バード組曲/G.ジェイコブ
ファイアダンス/G.ウールフェンデン
交響曲第3番「カラー・シンフォニー」/P.スパーク
東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の第171回定期演奏会に、ダグラス・ボストックが11年ぶりに登場する。
ボストックは2000〜2006年に常任指揮者を務め、TKWOの音楽的発展に大きく貢献した指揮者だ。今回、かつて深く関わった楽団との久しぶりの共演が実現する。
「TKWOは、私の人生において非常に特別な存在です。今回はまるで故郷に戻ってくるような気持ちです。」
そう語る彼が最後にTKWOを指揮したのは2014年。
今回、11年ぶりに池袋・東京芸術劇場の舞台でタクトを振る。
現在はドイツ在住。南西ドイツ室内管弦楽団の首席指揮者としても活躍する国際的マエストロが、約2か月間の長期滞在の中心イベントとして、このTKWO公演を位置づけている。
今回のプログラムは、"英国音楽"がテーマ。
自身が長年にわたり深い敬意と共感を寄せてきたイギリス作曲家の作品を、ボストックが丁寧に、そして情熱的に紹介してくれた。
最初に演奏するのは『フローリッシュ』。作曲者は、イギリスの偉大な作曲家の一人であり、私の大好きな作曲家でもある、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズです。もちろん、彼は多くの交響曲で特に有名ですし、吹奏楽の世界では『イギリス民謡組曲』で知られています。しかし、今回演奏するのはその曲ではありません。彼が1939年にロイヤル・アルバート・ホールでの祝賀行事のために書いた非常に短い曲です。この曲は約20年ほど前にTKWOと一緒に録音した、思い出の作品でもあります。
2曲目は、吹奏楽のクラシックの一つで、私が心から愛する曲です。もう一人の著名で偉大なイギリスの作曲家、グスターヴ・ホルストによる『ハマースミス』です。ホルストの吹奏楽のための『第一組曲』と『第二組曲』は広く知られています。しかし、この『ハマースミス』はよりシリアスな作品で、より現代的な音楽言語、ホルスト独自の非常に個性的な語法で書かれています。
この曲は、ホルストがかつて住んでいたロンドンにある、テムズ川沿いの地区ハマースミスを描写しています。1930年当時のハマースミスの情景、街が目覚め、忙しい一日を過ごし、そして夜には再び眠りにつく、そんな様子を描いています。
前半最後の曲は、私のお気に入りの一つであるゴードン・ジェイコブ作曲の『ウィリアム・バード組曲』です。この曲は、1923年に書かれました。これはヴォーン・ウィリアムズが『イギリス民謡組曲』を書いたのと同じ年です。
この曲は、ルネサンス期、つまり16世紀末のイギリスの音楽を編曲したものです。作曲された当時でも400年から450年以上も前の音楽を扱っていたことになります。ウィリアム・バード自身はイギリスの作曲家で、鍵盤楽器奏者でもあります。彼の作品のほとんどは鍵盤楽器のためのものでした。この組曲は、それらの曲のいくつかを吹奏楽のために編曲したものです。最も美しく、最も魅力的で、最も味わい深いセレクションであり、吹奏楽にとって非常に重要な作品だと思っています。まさに真の古典です。
後半にまずお届けするのは、日本ではまだあまり知られていない曲『ファイアダンス』です。『ガリモーフリー』などで知られるガイ・ウールフェンデンは、数年前に亡くなりました。彼の奥様が今も彼らの音楽出版社を経営していますが、その奥様によると、この作品を日本に販売したことはないそうです。なので私達の今回の演奏が日本初演である可能性はかなり高いでしょうね。
この作品は、元々は交響楽団のために書かれた曲で、イングランド中部にあるウォリック城での祝典のためのものでした。その後、彼はすぐに自分自身で吹奏楽のために編曲しました。全編が8分の6拍子、8分の9拍子、8分の12拍子で書かれ、素敵なリズムのジョークが散りばめられています。ガイ・ウールフェンデンは非常にユーモアのある人物で、この作品からもそれが感じ取れると思います。ファイアダンスとはいっても、これは英国流の炎なので、制御不能になることはありませんよ。とても楽しくてチャーミングな曲です。
そして、さらに現代に近づき、フィリップ・スパークの『交響曲第3番「カラー・シンフォニー」』です。「The Colour Symphony」ではなく、「A Colour Symphony」であるところが、いかにもフィリップらしい、謙虚な言い方ですね。5つの楽章はそれぞれ色を描写しています。第1楽章は「白」、第2楽章は「黄」、第3楽章は「青」、第4楽章は「赤」、そして第5楽章は「緑」です。
特に第3楽章の「青」には注目です。木管楽器と打楽器、そして特別ゲストである2つのチェロのための楽章です。コントラバスとともにこの2つのチェロが最も美しいパッセージを奏で、弦楽三重奏として展開していきます。壮麗でうっとりするような楽章です。対照的に第4楽章の「赤」は、金管楽器と打楽器のための楽章で、非常に情熱的です。そして「緑」では、深緑から始まり、次第に生き生きとしてきて、最後は華やかに"フローリッシュ"で終わります。まるでヴォーン・ウィリアムズの『フローリッシュ』でまたコンサートが始まるかのようにね。
この特別なプログラムをぜひ会場で体験してほしいです。私の故郷ともいえる東京佼成ウインドオーケストラと再び共演できることを、大変嬉しく思っています。11月23日、池袋の東京芸術劇場にぜひお越しください。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。