リヒャルト・シュトラウス&ホルン、名匠が奏でる輝きの饗宴!
富樫鉄火(音楽ライター)
2021年4月に開催予定だった第153回定期演奏会は、3度目の登壇となるはずだったオランダの名匠、ユベール・スダーンが新型コロナ禍の影響で来日不能となった。そこで急きょ、首席客演指揮者・飯森範親の代役登壇が決定……したものの、緊急事態宣言の発出で、開催自体が中止となってしまった。
あれから2年弱、ついにスダーンが、当初の曲目のまま、正式登壇する!
東京佼成ウインドオーケストラの人気レパートリーには、リヒャルト・シュトラウス(RS)作品が多い。スケール豊かなRSの曲は、その多くにホルンの聴かせどころが用意されている。RSの父親は、プロのホルン奏者だった。そのため、ホルンは幼少期から身近な楽器だったのだ。2つのホルン協奏曲はいうまでもないが、大編成オーケストラのなかでこそ、RSのホルンはひときわ輝いて響く。
今回は、そんなホルンが大活躍するRSの名曲がずらりと並んだ。スダーン自身、若いころ、ホルン奏者だった。これ以上の組み合わせはないだろう。
《13管楽器のためのセレナード》は、RSが18歳のときの出世作。文字通り「13人」の管楽器奏者のために書かれたが、どの楽器も原則2人編成なのに、ホルンのみ4人が指定されている。
交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》は、主人公ティルのテーマを、ホルンが担当する。原曲スコアではⅠ~Ⅳの4人だが、オプションとしてⅤ~Ⅷがあり、計「8人」分のパート譜が用意されている。しかも、通常、ホルンはⅠ・Ⅲが高音部を、Ⅱ・Ⅳが低音部を吹き分けることが多いのだが、ここでは1番奏者が一人で低音から高音までを吹かねばならず、至難のテーマとして知られている。おなじみ大橋晃一による新編曲初演である。
歌劇《ばらの騎士》組曲も、定期では再演となる人気曲だ。これまた、冒頭からホルンの〈咆哮〉ではじまる。元帥夫人の閨房シーンである。その後の主要場面も、ことごとくホルンが受け持つ。どれもが〈リヒャルト節(ぶし)〉とでもいいたくなる、独特の響きである。
そしてもう1曲、薬味のように加えられているのが、日本でも大人気、フランコ・チェザリーニの《アルプスの詩》だ。RSの《アルプス交響曲》にインスパイアされて生まれた曲だ。もちろんここでもホルンが大活躍する。
果たして、名匠スダーンは、なかのZEROでどんな響きを聴かせてくれるのか。ぜひ当日、会場でご確認いただきたい。〈敬称略〉