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オーボエ008|オーボエ|東京佼成ウインドオーケストラ Tokyo Kosei Wind Orchestra
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Q & A by TKWO Players
奏法Q & A

oboeオーボエ

音程が悪いのですが、どうしたら良くなりますか。

音程はオーボエにとって永遠のテーマですね。ほかの楽器でも同じ悩みはあるでしょうが、身内びいき(?!)かもしれませんが、特にオーボエは、ただ息を入れただけではまともな音列になり得ません。その傾向が顕著な楽器と言えると思います。

さて、ただ一概に音程が悪いとは、どのような症例を指すとみなさんは思いますか?「チューナーで合っていること」が音程が良い、と思っていませんか?一歩進めば「第○音は○セント上げる(下げる)」が命だと思っていませんか?

もちろんそれもとても大事です・・・が、それが「命!」ではないのです!

しかし、まずはその先へ行くためには、乗り越えなければいけないハードルがあります。最低限のルールが必要です。まずそこを書いてみます。

その1  平均律を「だいたい」つかもう

「平均律」という言葉をみなさん知っていますか?簡単に説明すると、西洋音楽成立以来、様々な研究者が1オクターブを、どう12個に分割すれば良い響きが得られるのか、研究しました。しかし弦楽器や管楽器のように、演奏中調節がきく楽器は、最良の響きを常に作る術を持てますが、鍵盤楽器などはそうは行きません。一つの調性には良くても、曲の中で転調すればどこかに絶大なる不都合が生じてしまいます。

そこで、1オクターブを均等に合理的に割って、どの調性でも「少しの」不都合で済む、平均律を生み出しました。いわば定規の目盛りのように、均等な幅に音を並べたのです。つまり、チューニングメーターの針が「真ん中」に来る音程が、これなのです。ちなみに均等に割ったものではないものの中の一つに「純正律」等もあります。

さて、オーボエはこの定規からどんな風にどのくらいはずれてるのでしょうか?

よくオーボエ奏者が悩むのは、だいたいどのメーカーの楽器を使用しても、真ん中のCや、第一オクターブを押したEやF♯やGなどが極端に上がり、逆にFや第二オクターブが下がったりします。いわゆる楽器の都合というもので、ほかにも色々とありますが、一つ言えることは

「チューニングの音を合わせたって、他の音も合う訳じゃない」

ということです。これは他の楽器も同じです。

ではチューニングの意味とは?

それは「このリードで今日は《チューニングの音》をこのくらい〈吹き上げ(下げ)〉て吹かなきゃならないから、この音はこの位〈吹き上げ(下げ)〉ないと合わない」という事を確認することです。その先に、音程合わせのための操作をするのですが・・・

さて、対処法はチューニングメーターを利用したロングトーンをしましょう。ただし、にらめっこだけばかりしてはいけません。まず針が真ん中に来るよう一つの音を出します。そうしたら、次に目をつぶってその音を出します。音を伸ばしつつ目を開けてみましょう。さあ、メーターの針はどこを指していますか?

真ん中に来るよう、根気強く、すべての音で練習しましょう。慣れてきたら、まずオクターブの跳躍を合わせたり、三度、五度音程などで練習してみましょう。

しかし、それにも、盲点があります。それは、メーターで合っていても、音程が高く聞こえたり、低く聞こえたりする音があるのです。いわゆる楽器の特質の範中にはいってしまいますが・・・

例えば、五線の真ん中のB♭の音は少し高く聞こえます。それはある程度はしかたないのですが、例えばソロの中などでは、ごくごく少しだけ分からないくらい低めに吹いてみてもよいでしょう。

先に触れたように、言葉を変えますが「機械的な」音程と「音楽的な」音程は、全く違うのです。ここで、次のステップの話につながります。

その2  チューナーが全てじゃない。

先に触れたとおり、メーターで合っていても、楽器の都合で合って聞こえない音もあります。正しい奏法であったとしても、です。ここから先は、ある程度の正しい奏法が前提です。しかし正しい奏法とは、そのようなことを包括してフォローして良く聞かせることでもあるのです。

さて、少し脱線しましたがテーマに戻りましょう。その1では大前提のルールを書きましたが、その2は応用編です。

先の項の平均律は、ある意味妥協の産物といえます。そしてオーボエを含む管楽器は(もちろん弦楽器も)、もとは音程がはっきり定まらない代わりに、鍵盤楽器にはできない、演奏中に音程を変えるという作業ができます。つまり、平均律以外の最良の響き、を求めることが可能なのです。

みなさん、聞いたことがあるでしょう?「第○音は○セント上げる(下げる)」という言葉を。しかし、管楽器は悲しいかな、あたたまるとピッチが上がっていき、冷えると下がります。つまり実際の音を出す瞬間、「第○音の為の○セント高い(低い)」音程とは、メーターの針が指す場所とは変わってくるのです。もちろん全員がメーターとにらめっこしてるなら話は別ですが、曲の中ではそうは行きません。ましてやコンクール直前の暑い時期に、クーラーのない体育館等で合わせをした日にはどこまで上がっているのやら・・・

その瞬間、一緒に吹いている楽器の都合もあります。他の楽器が、「この音だけはどうにもならない」のであれば、付き合ってあげなければなりません。

そこで必要になってくるのは「相対音感」です。「絶対音感」は、この音はこのピッチであるという絶対的な音高を理解できる能力です。対して、「相対音感」とは、例えば「今のCの音がこの高さだったから、次のGはこの高さだな」と相対的に音高を感じるとる能力です。

これを身につけるには経験がものをいうところもあります。そしてそのためには良い音楽のCDを聞いて、良い音程のイメージを体に染み込ませましょう。

ここまで来ると、ある程度プロの演奏家の技術の範中に踏み込んでしまいますが、要は「周りを良く聞いて合わせましょう」と言うことなのです。合っていないと感じたとき、ここで大事なのはどのパートか、自分は付き合って上げ下げ可能な音か、判断する気持ちの余裕と、音を出すことだけに必死にならない体の余裕が必要なのです。基礎練習が大事だとよく言うのはここにもつながってくるのが良く分かるでしょう?!(笑)

そして、最後に隠し味に行ってみましょう。

その3  オーボエの音域の常識は周りに通用しない。

吹奏楽に限らず、オーケストラやアンサンブルでは、様々な楽器と合わせていかなければなりません。その1で、メーターで合っていても響きがそうは聞こえない音について触れましたが、これはなにもオーボエに限ったことではありません。

全く同じ音をユニゾンで鳴らしたときに、楽器によってはその音の感じ方が違います。例えば、オーボエには何でもない中音域の音でも、ファゴットには高音域の音になりますし、オーボエには高音域でも、フルートには何でもない音域だったりします。

もう一つ例を挙げると、他の楽器と一緒に音階を吹いてみると分かりますが、上がって(下がって)いくときに「ここから高い(低い)音域」と感じる瞬間が、楽器によって違います。

オーボエの高音域とのスイッチは、まずなんと言っても第二オクターブキーを押したAからでしょう。しかし、主に吹奏楽に使われている楽器では、これが同じではないことが多いのです。

なにを言いたいかというと、「音程が合っているのに合っているように聞こえない」と言う状態は、これが原因で生じるのです!これが「ミソ」なのです。

どの楽器と今、一緒に吹いていて、相手がその音をどのように感じているか、高音域と感じているのか、低音域と感じているのか、敏感に感じ取ってください。それには、その2と同じく正しい奏法と、余裕が必要なのです。

高音域でも、あたかも低音域を吹いているかのような息で吹いたり、オーボエの音域の切り替えスイッチの無い場所で、他の楽器に付き合って、響きをあたかも高音域のように切り替えたり、逆に自分が大変なところでは他の楽器に、付き合ってもらったり・・・

アンサンブルする事ということは「相手を思いやること。相手の気分を考えてあげること」なのです。みなさんは、日常生活で他人の嫌がることはしないでしょう?仲良くしていくために他人との距離を試行錯誤したりしますよね?

話は脱線しましたが、不思議なもので、オーボエの音の、先のようなコントロールは、具体的に体をどうこうコントロールするというより、そのように吹こう、という気分で吹くとそのようになってくるものなのです。もちろん、その1という大前提と先から何度も触れているように、余裕を作る努力が必要です。僕自身、そのためのトレーニングを欠かせません。

さて、長々と細かく書きましたが、正しいことを覚えて、より良いイメージを持ってしっかり練習しましょう!

宮村 和宏

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