第166回定期演奏会
は、「オストウォルド賞」受賞作品特集!
吹奏楽作品の作曲賞として世界で最も権威のあるオストウォルド賞の受賞作品は、吹奏楽発展の歴史を映し出しています。
TKWOの掲げる「つくる。つつむ。つなぐ。」の実現のため、これまでの吹奏楽史をつくり上げてきたこれらの名曲を次代につなぐべく、受賞作品から選りすぐりの4曲をお届けいたします!
オストウォルド賞とはどんな賞か? どんな楽曲が受賞しているのか?
といった賞にまつわるコンテンツを、公演に先立ちご紹介いたします。
ぜひご一読いただき、本公演をより深くお楽しみください!
オストウォルド賞について
中橋愛生(楽芸員)
オストウォルド賞は、アメリカ吹奏楽指導者協会(アメリカン・バンドマスターズ・アソシエーション/略称:ABA)による歴史ある賞で、現代に至るまで数々の名作を世に送り出してきた、世界で最も権威ある吹奏楽のための作曲賞の一つ。そもそもABAは1929年にエドウィン・フランコ・ゴールドマンが吹奏楽の地位の向上を目指して設立した団体だ。その活動内容は多岐にわたるが、創設当初より大きな命題の一つとして挙げられていたのが「吹奏楽のための新しい優れたレパートリーの創出」だ。実際、グレインジャー『リンカンシャーの花束』やホルスト『ハマースミス』といった吹奏楽史に輝く名作がABAの総会において初演されており、着実に実績は重ねられた。
それと並行し、ABAの設立当初よりコンサートの収益を積み立て、新作に賞金を与えることで作曲の奨励を行うことも計画されていた。たびたび実行されていたものの資金難で継続が難しかったところ、バンドのユニフォームを制作していたオストウォルド社からの援助で毎年の開催が可能となり、1955年に「オストウォルド賞」が設立された。新しく作曲された吹奏楽作品のなかで傑出したものであると認められた楽曲に贈られるこの賞は、賞金のみならず多大な名誉を作曲者にもたらすこととなる。1956年、集まった12曲の中から第一回受賞の栄誉を賜ったのはクリフトン・ウィリアムズ『ファンファーレとアレグロ』。現代でも演奏され続けているこの楽曲への授賞式(3月10日)の直前、スポンサーであるアーネスト・オストウォルドも、創設者のゴールドマンも、奇しくも同じ2月21日に病没している。彼らがこの賞に吹奏楽の未来を託したであろうことは想像に難くない。
その後、オストウォルド社は1981年までで資金提供を辞め、楽器メーカーC.G.コーン社、全米バンド楽器製造社協会がスポンサーを引き継いだ後、1985年からはABAが資金運営を担っている。1991年から1997年までは隔年で賞を与えて受賞者に新作を委嘱し翌年初演するスタイルに変更、1999年からは旧来の方式に戻すも2003年に休止、2005年からは隔年開催となっている。大きく方針が変わったのは2011年からで、賞の協賛にスーザ財団が加わり、名称も「スーザ/オストウォルド賞」と変更される(スーザはABA創設時の名誉会長)。これ以降、「教育用低グレード作品」と「高グレード作品」が交互に募集されるようになり、現在に至っている。なお、2011年に初の低グレード作品で受賞したのは、日本人初の受賞作となった後藤洋『ソングズ』だ。
まだ吹奏楽が野外で演奏される実用音楽が中心だったおよそ100年前。そこから多くの先達が吹奏楽の未来を信じ、紡いできた賞。様々な時代の在り方、数知れぬ想いが、受賞作の背景にある。本公演からは、「その先」にあるものも聞こえてくるだろう。
オストウォルド賞受賞作品
受賞年 | 作品名 | 作曲者 | 過去定期での演奏 収録CD |
---|---|---|---|
1956 |
Fanfare and Allegro ファンファーレとアレグロ |
J. Clifton Williams C.ウィリアムズ |
第34回 (佼成出版)KOCD-2811,8001 (ユニバーサルミュージック)UCCS-1159 |
1957 |
Symphonic Suite第166回定期演奏予定曲 交響組曲 |
J. Clifton Williams C.ウィリアムズ |
第4回、第66回 (佼成出版)KOCD-2302 (ユニバーサルミュージック)UCCS-1164 |
1958 | Portrait of the Land 国の肖像 |
J. Mark Quinn J.M.クイン |
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1959 | Introduction and Scherzo 序奏とスケルツォ |
Maurice Weed M.ウィード |
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1960 | Overture in G 序曲ト調 |
Florian Mueller F.ミューラー |
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1961 |
Cumberland Gap Overture カンバーランド・ギャップ序曲 |
Joseph Willcox Jenkins J.W.ジェンキンス |
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1962 | Concertino for Band 吹奏楽のための小協奏曲 |
Fritz Velke F.ヴェルケ |
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1963 | Concert Suite 演奏会用組曲 |
Frederic H. Ashe F.H.アッシュ |
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1964 | Symphony for Band 吹奏楽のための交響曲 |
Robert E. Jager R.ジェイガー |
第127回 (コロムビア)COCQ-85502 |
1965 | Overture for Band 吹奏楽のための序曲 |
Frederick Beyer F.ベイヤー |
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1966 |
Variations on a Korean Folk Song第166回定期演奏予定曲 朝鮮民謡の主題による変奏曲 |
John Barnes Chance J.B.チャンス |
第30回 (佼成出版)KOCD-2302,2402 (ポニーキャニオン)PCCL-50016 (ユニバーサルミュージック)UCCS-1159 |
1967 | Daedalic Symphony ダエダリック交響曲 |
Lawrence Weiner L.ウェイナー |
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1968 |
Diamond Variations ダイアモンド・ヴァリエーション |
Robert E. Jager R.ジェイガー |
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1969 | Aria and Toccata アリアとトッカータ |
Richard Willis R.ウィリス |
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1970 | Toccata トッカータ |
Fisher Tull F.タル |
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1971 |
Divertimento for Concert Band 吹奏楽のためのディベルティメント |
Karl Kroeger K.クレーガー |
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1972 | Sinfonietta シンフォニエッタ |
Robert E. Jager R.ジェイガー |
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1973 |
Festival Fanfare March フェスティヴァル ファンファーレ マーチ |
Roger Nixon R.ニクソン |
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1974 | Visions ヴィジョンズ |
James S. Sclater J.スクレイター |
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1975 | Jubiloso ジュビローソ |
Robert M. Panerio, Sr. R.パネリオ |
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1976 | Todesband 死の縛め |
Lorette Jankowski L.ヤンコフスキー |
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1977 |
Dances Sacred and Profane 神聖な舞曲と世俗的な舞曲 |
William H. Hill W.H.ヒル |
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1978 |
Symphony, Opus 35第166回定期演奏予定曲 交響曲第1番 |
James Barnes J.バーンズ |
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1979 | No Winner Chosen 該当者なし |
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1980 | Mutanza ムタンザ |
James E. Curnow J.カーナウ |
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1981 | Visions Macabre 死の幻想 |
James Barnes J.バーンズ |
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1982 |
Armies of the Omnipresent Otserf 偏在する軍隊 |
David R. Holsinger D.R.ホルジンガー |
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1983 | Exaltations 高揚 |
Martin Mailman M.メイルマン |
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1984 |
Symphonic Variants for Euphonium and Band ユーフォニアムとウィンド・アンサンブルのための交響的変奏曲 |
James E. Curnow J.カーナウ |
第36回 |
1985 |
Symphony for Winds and Percussion 管、打楽器の為の交響曲 |
Joseph H. Downing J.ダウニング |
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1986 |
In the Spring, at the Time When the Kings Go Off to War 春になって、王達が戦いに出るに及んで |
David R. Holsinger D.R.ホルジンガー |
第121回 (ポニーキャニオン)PCCL-50014 |
1987 |
Synergistic Parable シナージスティック・パラブル(神人協力説の寓話) |
David Sartor D.サーター |
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1988 | Piece of Mind ピース・オブ・マインド |
Dana Wilson D.ウィルソン |
(佼成出版)KOCD-3569 |
1989 |
For Precious Friends Hid In Death's Dateless Night for Wind Ensemble,
Op. 80 彼の地に去ったかけがえのない友たちへ |
Martin Mailman M.メイルマン |
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1990 | Fire Works 花火 |
Gregory Youtz G.ユーツ |
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1991 | The Soaring Hawk 空高く舞う鷹 |
Timothy Mahr T.マー |
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1992 | Endurance* エンデュランス |
Timothy Mahr T.マー |
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1993 |
Passacaglia (Homage on B-A-C-H) パッサカリア:B-A-C-Hによるオマージュ |
Ron Nelson R.ネルソン |
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1994 |
Chaconne (In Memoriam)* シャコンヌ(イン・メモリアム...) |
Ron Nelson R.ネルソン |
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1995 | Sea Drift 漂流 |
Anthony Iannaccone A.アイアナコーン |
(ソニー・クラシカル)SRCR-1788 |
1996 |
Psalms For A Great Country* 偉大な国への讃歌 |
Anthony Iannaccone A.アイアナコーン |
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1997 | Zion ザイオン |
Dan Welcher D.ウェルチャー |
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1998 | Circular Marches* サーキュラー・マーチ |
Dan Welcher D.ウェルチャー |
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1999 | Fantasy Variations 幻想的変奏曲 |
Donald Grantham D.グランサム |
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2000 | Southern Harmony サザン・ハーモニー |
Donald Grantham D.グランサム |
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2001 | No Winner Chosen 該当者なし |
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2002 | Harrison's Dream ハリソンの夢 |
Peter Graham P.グレイアム |
第75回 (佼成出版)KOCD-8010 |
2003 | No Contest Held 非開催 |
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2004 | No Contest Held 非開催 |
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2005 | Redline Tango レッドライン・タンゴ |
John Mackey J.マッキー |
第90回、第165回 (EMIミュージック・ジャパン)TOCF-56077 |
2006 | No Contest Held 非開催 |
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2007 | Raise the Roof レイズ・ザ・ルーフ |
Michael Daugherty M.ドアティ |
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2009 | Aurora Awakes オーロラは目覚める |
John Mackey J.マッキー |
第165回 (ポニーキャニオン)PCCL-50016 |
2011 |
Songs for Wind Ensemble ウィンド・アンサンブルのためのソングズ |
Yo Goto 後藤 洋 |
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2012 | Flourishes and Meditations 栄華と瞑想 |
Michael Gandolfi M.ガンドルフィ |
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2013 |
Pale Blue on Deep ペイル・ブルー・オン・ディープ |
Aaron Perrine A.ペリン |
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2014 |
Concerto for Alto Saxophone アルト・サクソフォン協奏曲 |
Steven Bryant S.ブライアント |
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2015 | Only Light オンリー・ライト |
Aaron Perrine A.ペリン |
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2016 | Masks and Machines マスクとマシーン |
Paul Dooley P.ドゥーリー |
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2017 | A Cypress Prelude サイプレス・プレリュード |
Christopher Lowry C.ローリー |
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2018 |
Symphony No. 2 - "Voices" 交響曲第2番「ヴォイシズ」 |
James Stephenson J.スティーブンソン |
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2019 | Unquiet Hours アンクワイエット・アワーズ |
David Biedenbender D.ビーデンベンダー |
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2020 | The Seer ザ・シアー |
Erik Santos E.サントス |
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2021 | Perpetua パーペチュア |
Peter Meechan P.ミーチャン |
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2022 |
Sinfonia第166回定期演奏予定曲 シンフォニア |
Zhou Tian 周天 |
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2023 | Tuebor Suite チューバー組曲 |
Andrew David Perkins A.D.パーキンス |
* 前年度受賞者による委嘱作品
参考
『シンフォニア』作曲者の周天(Zhou Tian)氏に、TKWO楽団員の堀風翔(Horn奏者/専務理事)がインタビューを行いました!
【第166回定期特集】周天氏インタビュー!
周天氏の『シンフォニア』のように、モールス信号をモチーフに取り入れた作品をご紹介しています!
【第166回定期特集】モールス信号と吹奏楽作品
公演情報
第166回定期演奏会
~オストウォルド賞の系譜~
日時
開演:18:30(開場:17:45)
場所
指揮
曲目
交響曲第1番/J.バーンズ
交響組曲/C.ウィリアムズ
シンフォニア/周天

■公演詳細
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