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本番で上がらないようにならないの?

小倉貞行(Tuba)
2001.3.18
2001.4.8
2001.4.15

「プロは本番で上がらない」と思っている方もいるかもしれませんが、とんでもありません。プロも同じ人間ですし、プロだから間違えられない、という意識もあります。ではどうしたら上がらなくなるか、あるいは上がってもいい演奏ができるかというお話しをしましょう。

●技術的にできていない場合
例えば練習の時10回に2から3回しかうまく演奏できないのでは本番で緊張するなという方が無理です。10回中少なくても7から8回はできるように練習しましょう。

●「本番」慣れをしてしまう
一般の人とプロと一番違う点は本番の回数かもしれません。最初のコンサートでは緊張しても、何度も本番を重ねるとだんだん慣れてきます。一般の人はなかなか本番の回数を増やすのは無理でしょうから仲間同士で模擬コンサートをしたり、とにかく人に聴いてもらう機会を増やしましょう。

●力まず、リラックスして演奏する習慣を身につける
本番の時は誰でも緊張してからだが固くなります。普段から体に力が入っていると本番ではもっと力が入って、とてもコントロールができなくなってしまいます。練習の時にはいつも無駄な力を入れずにリラックスして演奏することを心がけましょう。

●堂々とした姿勢で自己暗示。そして聴衆も?
ステージに上がるときは堂々とした姿勢をしましょう。そうすると自然に息が楽にはいるようになり、リラックスできます。また、堂々とすると「自分は上手なんだ」という自己暗示にもなり、見ている聴衆も「あ、上手そう」と思い、二重の効果があります。

●普段は謙虚、でもステージでは世界一!
人間、誰でも謙虚でありたいですね。でもステージに上がったら「自分は世界一なんだ」って思いましょう。「みんなに楽しんで聞いてもらおう」という気持ちで楽しく演奏できたら最高です。

●「あの世界的な奏者・・・・」になりきってしまうのも手!
もし自分の好きな奏者がいたらちょっとした仕草をまねして、その人になりきってしまうのもいい方法です。「・・・の世界」に自己暗示で入ってしまうのも結構快感です。

●演奏中のミスはすぐ忘れること!
一度音をミスするとその後ガタガタになってしまうことがあります。どんなすばらしい奏者でもミスをします。でもそのミスを忘れてその後いい演奏ができるかどうかが違うのです。演奏中には反省をせず、先の演奏を考えましょう。

●金管奏者は直前の吹きすぎに注意!
金管奏者がよくしてしまう失敗に吹きすぎがあります。「吹いていないと不安でつい吹きすぎた」「練習ではいい音してたのに本番ではバテて・・」とならないように本番で一番いい音が出るペースで練習しましょう。気持ちもフレッシュでなければいけません。

●「緊張」は悪いことばかりじゃない
緊張して演奏するのは決して悪いことばかりではありません。「今日は冷静に、いつも通りに吹けたな」と思った本番より、「緊張したな」と思った本番の方が聴いていると良かった、ということもあります。誰でも緊張はします。緊張したことに焦ったりせず、「いい演奏をしよう」と考えてください。


◆メンタルコントロール編◆
●ジャンボ尾崎の言葉「心技体なんてうそ。体技心じゃなきゃダメだ。」
ゴルフの尾崎選手がテレビで言っていた言葉です。日本人はつい精神論に走って、「根性があれば」とか「無心になれ」などと言いますが、まず体が健康であること。次にしっかり練習をして技術を身につけること。そして最後に精神論という意味だと思います。
今回は主に精神的なコントロールの話をしますが、その前にまず健康であること(ある程度の体力も)。またしっかりと練習をして楽器の演奏レベルを上げること。そして最後にこのメンタルコントロールを考えてください。健康でなかったり、演奏技術がないのに本番だけうまくいく、ということは絶対にありません。

●悪魔のささやき?・・・・もう一人の自分
今回のメインテーマです。本番で演奏している最中に『次をミスしたらどうしよう』『次のハイトーンは唇をこうしたら出るかもしれない』と言っているもう一人の自分に気が付いたことはありませんか?そして何も言わず黙々と演奏している自分がいます。練習の時はそうでもないのに本番になると不安になることばかり言って、そしてその悪い方の結果になってしまう。こんな経験はありませんか?自分の中にいるのにあれは悪魔のささやき
のように思えます。あいつがいなければうまくできたのに・・・。
この「もう一人の自分」を黙らせる、または味方に付けることで本番はずっとうまくいく
・・・かもしれません。

●この二人は誰?
何も言わない自分と、本番で不安なことを言うもう一人の自分。この二人は一体誰なのでしょうか。私の大変に個人的な意見では、右脳と左脳が関係していると思います。言葉を使わずただ黙々と演奏する自分(右脳)と、言葉を使って命令する自分(左脳)。でもこれは医学的裏付けのない全く個人的な見解です。

●「無心になれ」って?全くの無心なんてできるわけない!
よく無心になれ、と言いますが、演奏をするときに全く何も考えないわけにはいきません。音楽的なことや、音程・バランスなど多くのことを考えなければなりません。「何も考えない」という意味での無心は無理なのです。

●「あいつ」に栓をするには先に何か言わせてしまう!
どうしても本番で何か言うのだったら、変なことを言い出す前に役に立つことを言わせてしまえばいいのです。それもはっきりと!

●言わせる言葉は「イメージにつながる言葉」、そして必ず「肯定文」で
左脳の言葉が右脳のじゃまをするのであれば、右脳のプラスとなるような言葉をしゃべらせればいいのです。難しく聞こえますが、右脳が理解できる「イメージにつながる言葉」、たとえば「リラックスする」「音楽的に歌う」「息をたっぷりとる」「音をホール全体に響かせるように」といった言葉です。「指」や「唇」など体の一部に命令するような言葉はできるだけ避けてください。また「力むな」といった否定文はかえって体を固くしてしまいます。「力まない」→「リラックス」、「指を固くしない」→「指や手首を柔らかく」というように肯定文にしてください。

●言葉は多くて三つまで。でも心の中ではっきりと!
本番の時に心の中で言う言葉があまり多すぎてもかえってよくありません。一つから多くて三つくらいでしょう。でもよけいなことを考えないようにはっきりと心の中で言ってください。声に出してしまうと変な人に見えるかもしれません。心の中で十分です。

●桑田のぶつぶつ、好調清原
巨人の桑田投手がマウンドでボールに向かって何かぶつぶつ言うのは有名ですね。よく『ボールに言い聞かせている』なんて書かれていますが、もしかすると何かつぶやくことで神経を集中させ、緊張することも防いでいるのではないでしょうか。
また一時不調だった清原選手が好調になったときインタビューでこんなことを言っていました。「バッターボックスに入るまではリラックスすることだけを考え、バッターボックスに立ったらボールをよく見ることだけを考え、相手がボールを投げたらバットを振り抜くことだけを考えている。」この言葉は清原選手が場面場面で一つだけイメージをはっきりと持ち、迷いや中途半端な動きを無くしたのではないでしょうか。

●外角低めに手を出すな?
もう一つ以前どこかで読んだ野球の話です。
相手ピッチャーの外角低めがすばらしく、バッターは手を出すとすべて空振りかゴロになっていました。そこで監督は「外角低めに手を出すな!」と言ったのですが、バッターはかえって「来た!」と意識してしまい結果は悪くなりました。そこで監督は逆に「高めを狙っていけ!」と言ったところ打てるようになったそうです。
これは前回の「イメージは肯定文で」と同じことなのです。「◯◯をしてはいけない」という否定のイメージを持つと、結局はそのことを意識してしまいよい結果は出ないのです。「力まない」→「リラックス」、「指を固くしない」→「指や手首を柔らかく」のように必ず肯定文にしてください。

●アーノルド・ジェイコブス氏の言葉「車の運転席にいるあなたはエンジンルームの
中で何が起きているかを知る必要はないのです。走るためにはただアクセル、ブレーキ、ハンドルなどをコントロールすればいいのです。」

元シカゴシンフォニーの名テューバ奏者、故アーノルド・ジェイコブス氏は呼吸法と共にメンタルコントロールの先生として有名でした。これは彼がよくクリニックなどで例に出していた言葉です。
また他の言葉では、「その机の上にあるコップの水を飲んでください。簡単ですね。でもこの行動をすべて言葉にしたら大変です。『目がコップの位置を確認し、腕に指令を出し、それぞれの筋肉を使う配分を変えて腕を曲げ・・・』とても複雑で膨大な情報量です。でもあなたは全く無意識にコップの水を飲みました。人間の脳はこんな複雑なことを無意識にできるほどすばらしいものなのです。その脳のじゃまをしてはいけないのです。」と言っていました。

楽器を演奏するときも同じです。「fを吹くときは腹筋を使って、ハイトーンは唇を締めて・・・」なんて考えたら吹けなくなってしまいます。コップの水を飲むのと同じように、楽器を演奏することも練習するうちに脳の中では"自動操縦"になっているのです。それなのに本番で体の一部分のことを考えてしまうとうまく演奏できなくなってしまうのです。

※この内容は個人(小倉)の意見であり、「正解」ではありません。

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