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リードの選び方<ファゴット編>

金崎 守(Bassoon)
2002.12.29

今回は完成リードを専門店にて購入する設定で説明いたします。
ダブルリードは極論すると、毎日調子のよい状態を維持するのは難しく、ちょっとした調整が必要になったり、状況に応じて他のリードを使用することも多々あります。楽器やボーカルとの相性や、合奏時におけるシチュエーションや奏法、あるいは自己の体調等に困っていろいろな変化を感じ、特に湿度には敏感で非常に大きな影響を受けます。
従って毎日少しではあるが変化している物であることを常に念頭に置いてください。前提条件として、楽器に漏れがないこと、ボーカルが曲がっていたりやぶれていないこと、購入するメーカーが決定していることとします。

先ず最初にすることは、専門店に自分が購入するメーカーの在庫が豊富にあるかどうか確認すること(入荷時がベスト)、そして誰よりも早くお店を訪れることです。遠方にお住まいの方々は何本か送ってもらい、その中から気に入ったリードの選択ができるかどうかお店と交渉してみてください。


※チェックポイント(1)
【リードが完全に乾燥している状態の時に先端の開き具合を目視する。】

○開きの形状が良いリード
同じ寸法の二等辺三角形を左右に並べます。その内側でも外側でも構いませんが、上下バランス良く滑らかに曲線を描いたもの、また基本的にこのような形であれば少しずれた菱形でも構わないでしょう。そしてサイドがくっついていないことです。
最近は見かけなくなりましたが、リードの開きを指の腹で押さえて閉じていった時、両サイドから閉じていく物は問題ありませんが、時々リードの中央部分から閉じてしまう物があります。これはもう修復不可能ですから完全にオミットできます。


※チェックポイント(2)
【リードの空気漏れの検査】

リードの先端部分を指の腹で押さえ完全に閉じるボーカルの挿入口の方から強く吸い上げて舌で挿入口を塞ぐと、一瞬リード内が真空状態なり、先端部を押さえた指を離しても、リードが舌先に1~3秒程くっつきます。
真空状態が解除された時に、リードの先端部が元の開きに戻ると同時に軽く「ポン」という音がします。これをポップ(pop)音と言います。
このような状態にならないリードは両サイドから息漏れがあり、いざという時信用できません。これはリードを水に含ませていってください。


※チェックポイント(3)
【クロウ(リードだけで吹いた時の振動音) CROW(鳥の鳴き声のような音)】

リードを軽くやや深めにくわえ、緩やかな息を送り込むとクロウが得られます。何々の音程のクロウが得られなければいけないと言う人も居られますが、多くの倍音が混ざった細かい振動音を得られるのが良いリードかもしれません。

以上3点を試奏前にチェックしておきましょう。


さていよいよ試奏ですが、先ずリードに十分に水分を含ませましょう(1~2分位)。冬の乾燥時はやや長めに、乾燥していた時より先端部がかなり開いてきます。しばらく吹き続けると(5~10分位、高音域が良いかもしれません)だんだん開きが閉じていき、止まります。そこがいろいろな因果関係に於ける貴方の最終的なリードの開きになります。ここからいろいろなチェックを開始します。

この時点や、以前でも(1)で述べたサイドがくっついてしまうようなリードは、貴方にとっては弱いリードと言えるでしょう。調整ができない人たちはオミット。それからリード以外に部屋の響きもチェックしておきましょう。とても良く響く部屋だと良く楽器が鳴ってリードも調子良さそうであると錯覚してしまいますので注意が必要です。


※チェックポイント(4)
【低音域が豊かに響くリードを選択しよう】

ファゴットは低音域のピッチが高くなりやすい傾向にあり、特にE,Eb,D,Db,Bb(最低音)等々、この辺のピッチが安定しているリードを選択してください。
低音域がきちんと響かないと、中・高音域の良い響きも期待できないでしょう。奏法にも困りますが、あまり開きが狭すぎると、ピッチが安定せず(高くなる)反応も悪く、良い響きも得られません。逆に開きがありすぎると高音域が苦しくなり、pでの発音やディミヌエンドやロングトーンが難しくなります。安定したピッチで豊かな響きのあるリードを発見できたら、今度は弱い息でp,ppがどの音でも楽に発音できるか試してください。
また、ディミヌエンドして途中で途切れるようなリードは十分な演奏効果を上げるのは望み薄と考えた方がよいでしょう。


※チェックポイント(5)
低音域をクリアできたら中音域に移ります。
まず第3間のEを思い切りクレシェンドしてみて下さい。ピッチが下がって響きを維持できないものはどうもダメなようです。全開放のFは高くなりやすいのであまり高くいってしまうリードは問題です。C#,D#,F#,A#の各音程と音色、響き等をチェックして下さい。均一な音色、響きが大切です。
(4)の様にp、ppでの発音やディミヌエンドは全音でチェックします。


※チェックポイント(6)
最後に高音域をチェックします。
中音域のGあたりから急に抵抗感が増し、この音域になると抵抗がさらに大きくなり、息は入らないし、音質は痩せるし、鳴らないし、苦しいと、難行苦行の音域です。この音域ではリードの善し悪しに左右されることは当然のごとくありますが、低音域から徐々に音を積み重ねて基礎的なブレスコントロールの技術を身につけていないと、いくらリードが良くても良い結果は得られないことも認識しておいて下さい。
全体的に楽に響いてくれるリードを選びましょう。ロングトーンが苦しくて続けられないようなものは強すぎるでしょう。逆に弱すぎるとタンギングやマルカート奏法が難しくなります。
Dがオクターブ下(中音域)のDと同じ運指で良いピッチと響きの得られるもの、F#のピッチと響きが健全であるもの、Hのピッチが高すぎないもの、C,Eb,E,F等のピッチが下がりすぎないようなリードを選択して下さい。


※チェックポイント(7)
ファゴットは他の楽器と異なり、設計上高音域がやや低く、低音域がやや高くなっているようです。リードの効能においても、高音域と低音域、p、ppの発音やディミヌエンドとマルカート奏法の間で対極にあり大変厄介です。つまり高音域において楽によく鳴るリードは、低音域ではレスポンスは悪く、ピッチも高めになります。同じように、p、ppの発音が容易なものはスタッカート・マルカート奏法に難点が出てくるといった具合です。
要するに全音域において、あらゆる奏法が可能なり得るバランスが重要なポイントとなってきます。とりあえず中・低音域がきちんと響き、ピッチの安定したもの、発音の容易なもの、ディミヌエンド等々ができるものを基準として選択しましょう。
材が厚かろうが薄かろうが、開きが大きかろうが小さかろうが、寸法や形がどうであろうが何でも結構なのです。要するにバランスであり、自分に合っていれば問題ないわけで、その眼鏡にあったスーパーリードを発見して下さい。


※チェックポイント(8)
最後にリードの材質についてお話致します。
ここではリードの性質全般ではなく、硬度について取り上げてみます。
一枚リード楽器は、リードに硬度表示があり、およそそのことが判り、選択の時大変便利です。
リードの堅さ柔らかさは見ただけや、触れただけでは解りません。リードを制作する方々は、プレガウズィングの時にある程度解るのですが、精密さに欠けおおよその世界です。
これは試奏した感じで判断するしかないでしょう。
ソフトな材は、柔軟でやや暗めなサウンドや発音やディミヌエンドに優れており、ハードな材は、音の通りが良くマルカート奏法や速いタンギング効果を発揮するように思います。ミディアムはその中間といったところでしょう。結局これも好みの問題ですので、自分が最高の満足を得られるのが最高の選択ということです。

それでは皆さんにとって最高のリードに巡り会えることを祈ります。
最後に一朝一夕にはいかないことを記しておきます。

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