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女は不利なの?

安藤真美子(Trumpet)
2003.5.11

今回は、私がよく受ける質問についてのおはなし。

「男性に比べて肺活量も少ないし、力もないから女性にトランペットは大変なんじゃないですか?」
「男性に負けないように何か努力していることはありますか?」
「女性なのにパワフルですよね。」

さてそう言われても、私は残念ながら男だったことがないので(!?)
差なんて分かりません。
そして、そもそもこれらの質問は男性の方が有利だという前提でのものですが、それ自体が間違いだと思います。

男女の差はもちろんあります。体格も肺活量も、力も、一般的に男性の方がまさっています。では、その差はトランペットを演奏する上で影響があるのでしょうか。

答えは「いいえ」。
トランペットを演奏する上で、大切なのは「肺活量」でも「力」でもなく、「良い音のイメージ」と「音楽的センス」、そしてそれを実現する為の「深いブレス」と、たゆまぬ「努力」だと思います。もちろん他の管楽器も同じです。

肺活量が少ないのであれば、ブレスの回数を増やせばいいのです。
勘違いしないでほしいのですが、管楽器を演奏する上で重要なのは、息の「量」ではなく、自分の肺の何パーセントを使っているかです。
浅いブレスではいい音は出ません。常にブレスを深く取って吹けば肺活量の多い少ないに関係なく良い音が出ます。
また、頭でイメージしている音楽がちゃんとしていればブレスの回数を増やしても、演奏はぶつ切れにはなりません。

シカゴ交響楽団のテューバ奏者だった故アーノルド・ジェイコブス氏は、片方の肺を手術で取ったあとも、それまでの半分の肺活量にもかかわらず、世界に誇るシカゴ響の金管セクションをしっかり支え続け、80歳を過ぎてもすばらしい演奏をしてきました。
そうして自らの演奏で証明してきた「重要なのは力や肺活量ではない」という彼の考え方は、管楽器すべてに共通するもので、世界中の多くのプレイヤーが影響をうけています。

それから、身体が小さければ、小さめのマウスピースや軽めの楽器を使えばいいのです。
マウスピースが小さいと音が細くなるとか、大きいマウスピースをつかえば太い音が出るというのは、ある条件の元においては正しいのですが、すべての人にあてはめるのは大きな間違いです。
一時期上記のような理由から、大きくて重いマウスピースや、重い楽器が流行ったことがありましたが、負担が大きくなって余分な力がかかり、逆に音が細くなったりキツくなったりして、結局元に戻した人は沢山います。
イメージ通りの音が出ているかが大事なのですから、道具は、人と違っても自分に合った物を使うべきだと思います。何事もバランスが大切です。

何度も言いますが、良い音が出ていればいいのです。

ところで、今回「イメージ」という言葉が何度も出てきます。それについて簡単にお話しましょう。

例えば猫の鳴き声を聞いたことがなければ、「猫の鳴き真似してみて」と言われてもできません。
知っていれば、頭でその鳴き声をイメージすることによって真似することができるのです。
そして、何度も注意深く聞き、練習することによって、より本物の猫の声に近づくことができます。
楽器も一緒で、勿論真似ばかりではいけませんが、やはりまず良い音、良い音楽を知らなければ、いくら練習してもダメなのです。
良い音楽を沢山聴いて、出したい音の「イメージ」をしっかり持つことが大切です。

以上のことから、男女で比較をすることはあまり意味のないことだということがおわかりいただけると思います。

ということで、あえて質問に答えるとすれば、私は「男性に負けないように」努力するのではなくて、「いい音楽家になれるように」努力しています。

ついでにもう一つ。
最近、男女の脳の違いについて様々なことがわかってきています。
その研究結果は、非常に興味深いものではありますが、やはりこれもあくまで一般的なものであって、すべての人にあてはまるわけではありません。
知識としての男女の差を気にしすぎると、正しいことが見えなくなってしまいます。
そして、それは悪い思いこみにつながっていきます。

結論:男性であろうと女性であろうと、その楽器ががあなたに向いているのであれば、努力次第で良い演奏ができるようになると私は思っています。
おしまい

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