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運動は楽器の演奏に役立つ? それとも害?

小倉貞行(Tuba)
2004.8.22

多くの皆さんがコンクールを終え、演奏会や来年へ向けて基礎をもう一度見直していると思います。今回はメールでも質問が寄せられましたが、運動や筋トレが楽器の演奏をするのに役に立つのか、それとも害があるのか、というお話です。これはもちろん医学的な結論ではなく、またプロの奏者の間でも意見が分かれるところですので一意見として参考にして下さい。

私は現在スポーツクラブに通い、主に水泳と筋トレをしています。以前はテニスをしていました。その経験からのお話です。医学的な部分は私も本などで読んだことで、また違う見解もあると思いますので参考程度にしてください。

運動は演奏、特に呼吸にいい影響があると思います。運動をすることで意識をしなくても息がいっぱい吸えるようになります。理論でいろいろなことを考えてもなかなか息が入るようにはなりません。でも運動をすると『意識をしなくても』息が入るようになります。

○短距離型運動と長距離型運動(エアロビクス運動)
運動にはテニスや野球など短距離型の運動と、ジョギングや水泳など長距離型の運動があり、特にゆっくりの運動で酸素を取り入れ、エネルギーに変える運動をエアロビクス運動と呼ぶそうです。楽器を演奏するのに役立つのは、この長距離型運動、エアロビクス運動だと思います。ある本によると、『エアロビクス運動を30分から60分続ける』のが呼吸器官のためにいいそうです。

○肺のピークは20才!? それから1年に1%ずつ減少!?
『何もしないと肺活量のピークは20歳、その後1年に1%ずつ減少する』という恐ろしいデータがあります。もちろん全く何もしない場合です。まさか、と思いますが、体の成長は20才までに止まりますし、20才の時4000ccの人が70才で2000cc、120才で0cc!
そんなばかな!とも思いますが、きっとデータをとってみると『70才で半分』は結構本当かもしれません。人間の持っている寿命は全く病気をしなければ120才、という説もあります。

○風船は大きくならなくても、もっと広げられる!
だんだん気持ちが暗くなってしまいますが、肺という風船は成長が止まってしまっても、周りの入れ物を広げることで風船をもっと広げることは出来ると思います。肺もゴムの風船と同じように柔らかく、柔軟性を持っています。理科の実験でご存じだと思いますが、周りの入れ物を広げることによって風船に息が入ってきます。それなら入れ物をもっと広げてあげればいいのです。理科の実験では横隔膜の腹式呼吸だけを習いますが、胸郭を広げることによっても風船(肺)は広がります。(ただし、肩が上がらないように注意してください。)筋トレも胸郭を広げる運動は効果的だと思います。

○力まないための筋トレ、エンジンを少し大きくするための運動
腹筋を強くしてフォルテを出す、と考える人がいますがそれは違うと思います。体力に余裕を持たせ、楽に演奏するためです。
例えば体の大きな大リーガー選手は軽くバットを振ってもホームランが打てます。同じ時速100kmでも軽自動車より3000ccの車は余裕を持って走りますね。以前初めて大リーガー選手と試合をした松坂選手が「エンジンが違う!」と言ったそうですが、可能なら少しでもエンジンを大きくして余裕を持って吹きたい、と思っています。

○大変? でも『楽にゆっくり長く』の運動を30分続けてみよう
わかっていても運動を続けるのは大変だと思います。でも息が入らなくて悩んだり無理な練習をするよりは楽な運動をゆっくりと30分続けてみましょう。おすすめは、水泳、ジョギング、エアロビクスなどです。

○運動から学ぶこと
運動から得ることは呼吸に関することだけとは限りません。楽器の鳴らし方や精神面で得ることもあります。テニスや野球でスイートスポットに当たった時は楽器を自然によく鳴らせた時と同じ快感があります。水泳で無駄な力が抜けると水と同化するようによく水に浮き、これもやはり楽器を鳴らすのと共通点があります。また、ゴルフをする時の精神状態は演奏会の本番の状態と同じ、という人もいます。

○運動はしなくてもいい。でも興味がある人は有酸素運動を。
いい奏者が必ず定期的に運動しているとは限りません。むしろ少数でしょう。『運動する時間に練習しろ』と考える人もいるでしょう。ですから絶対に運動をした方がいいとは思いません。でももし体力が足りない、何をやっても息が入らない、運動が好き、という方は悩むより有酸素運動をしてみてください。意識しなくても息がたっぷり吸えるようになる・・・かもしれません。

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