打楽器の音について
2006.1.22
2006.1.29
タイコは他の楽器よりもすぐに音楽に参加できて、いいですよね。
基礎打ちを真面目にやっていれば、そのうちには音楽で使えるテクニックが付いてきます。また、小物打楽器は曲の中でしか練習しなくても何とかやれる感じがします。おおよその学校(団体)の打楽器パートメンバーは、わりとすぐに演奏要員として舞台に立っています。木管・金管と違って"音"だけはすぐに出るからです。
でも、"打楽器の音(音色)"のことを考え始めると、実は大変なパートなのだ、ということに気が付きますよ。
たとえば、赤ちゃんが"バンバン"と何となく音を出しているのを聞いて、"きれいな音だ"と思う人がいるでしょうか?職人さんが釘を打っているとき意識して音を出しているので「打楽器奏者」と言えるでしょうか?・・実は、あの打音は心地よくて私は好きですが・・他のリズムではたぶん釘をうまく打てないでしょうから、いろんなリズムを出せない場合は打楽器奏者とは言えませんね。
"叩いて音が出る"ことと、"打楽器の音を聞かせる"ことは違います。 どこが違うのでしょうか?
それは、打つ音に対して意識があるか無いか、です。
どこに意識を持って叩けば良いか、をわかって演奏すれば"打楽器を弾いてい る"と胸を張って言えますよ。
以下に意識する事柄を思いつくだけ書いてみます。他にも抜けている点があるかもしれません。
1. タイコの面(音が出る場所)までの距離を把握していること
2. 速さと距離をあやつって、音が出せること
3. 出したいリズムを思い描けていること
4. 音を出した後、響きの処理が適切にできること
これを書いている私自身も、こんなにたくさん一度に意識することは無理です。が、実はもう皆さんは無意識にやっていることも多いのです。
<意識した音を出すには>
[1]タイコの面までの距離を把握していること
極端な例をあげると、どこが打面だか分からないままバチを動かしても良い音はでませんね。赤ん坊の"バンバン"と違い、私達は無意識に『距離を測って演奏している』のです。
距離感がうまくいってないとタイコの皮に穴が開いたり、小さい音のときバチが空振りして音が出なかったり・・また、自分ではしっかりした大きい音を出したつもりでも実際はあまり良い音が出てなかったり・・となります。
距離を把握してこその打音ですね。また、距離がわかっていると、そこまでのバチの動き方も決められますね。
[2]速さと距離をあやつって、音が出せること
これを意識するのに良い方法があるので、読みながらやってみてください。
地球には「重力」があって、どんな物も落ちていくときにはだんだん速さが増していきます。
演奏中のバチや腕にも「重力」がかかっているので、そのまま落とせばバチの速さはだんだん変わっていくはずです。
ちょっと意識して落としてみましょう。自然に腕(バチ)が落ちてだんだん速くなる感覚が把握できたら、もう速さを調節する意識が生まれたと言えます!
途中から速くならないように、落とし方をセーブしたり、すごく速く腕を落としたり、最初から速く動かしてみるなど、いろんな動かし方をしてみましょう。それが"速さをあやつっている"ということですね。
バチの位置(バチと打面の距離)を変えてみると、さらに変化が加わります。今自分がやっている音楽に一番適した音はどんな音かを考えたとき、どの距離からどんな速さでバチを動かせば良いかと判断しながら演奏するようになればしめたものです。
操作する感覚は最初ぎこちないですが、慣れるとバチの高さ・速さの違いで 音が変化することが楽しくなりますよ。
基礎練習のときに意識して練習してみてください。
[3]出したいリズムを思い描くこと
打楽器奏者はいつもこれを意識していなければいけません。
ちょっときつい書き方になりましたが、それほど大切なことです。
譜面に書いてあるリズムを見てメトロノーム通りに叩くだけなら、機械と変わりません。いえ、むしろ電子音のほうが安定した"良いリズム"となってしまう可能性もあります。
安定したメトロノームテンポを出すことも打楽器奏者の大切な使命ですが、人間にしかできない柔軟な感性でリズムを出すことも大切な役割です。
柔軟なリズムをちゃんと出せる為にはまず、旋律楽器の歌い方が分かっていることですね。他のパートが出しているリズムも良く聴いてメトロノームとの差がわかってくると、どのようなリズムを出すのが音楽的なのかもわかってきます。
音楽を自分のものにしてから打楽器のパート譜をみると、単調な音符にも"旋律"が見えてくるから不思議ですよね。たぶん、皆さんそういう経験があると思いますが。
腕(バチ)にその感性が直接伝わるように意識を強く持ってリズムを思い描くことが大切です。
旋律を歌いながらリズム練習をするのも一つの良い方法ですね。
[4]音を出した後、響きの処理が適切にできること
これは一見たいした問題ではないように感じますが、実は打楽器はきれいな 響きを出すことと同じ位、音を出した後の響きをどう止めるかも大事な音楽の一部なのです。自分が出した音に責任をもつ意識は必要ですよね。
木管・金管奏者は息を止めると音が止まりますが、打楽器はそうはいきませ んね。音符に書いてある音の長さ(4分音符・2分音符など)と音楽的な長さとは違う場合もあります。
管楽器の息使いを想像して、また実際に一緒に息を使ってみて長さを判断するのも良いでしょう。
打楽器はいろいろな素材やさまざまなバチ、演奏する角度もいろいろで、楽器によって腕の使い方も違っていますね。
それらに共通している意識の"基礎"が持てているかそうでないかで後々の楽器練習にかなり差が出てきます。
どの楽器に当たっても上の4つを思い出して練習に望んでくださいね。
「打楽器の音について」おわり。