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新入部員、初心者への指導法について<金管編>

萩谷克己(Trombone)
2008.4.13

金管楽器は向き不向きが上達にかなり影響あります。希望する楽器と向いている楽器が一致すれば理想ですが、なかなかそうはいきません。プロ奏者へのアンケートで「どうしてその楽器を選んだのか?」という質問に対して「先生に無理矢理」という回答がしばしば見受けられるのはその表れでしょう。
 ですから希望する楽器に当たらなかったとしても指導者からのアドバイスに素直に耳をかたむける柔軟性はほしいです。かく言う私も先生に無理矢理トロンボーンに回された一人です。


♪楽器選択上の注意点

【体格】
 体の大きな人がテューバというのはよくある話です。たしかに楽器は大きくて重いので、体格、体力はあった方が有利でしょう。しかし音を出す上では体格はそれほど関係ありません。小さい体でも立派な音を出す人はたくさんいます。
トロンボーンは、きちんと6ポジションを届かそうと思ったら、身長160cmぐらい欲しいですし、7ポジションになると175cmぐらい必要になります。が、F管付きのテナー・バス・トロンボーンを使えば5ポジションまで届けば問題無いので150cmぐらいあれば十分です。トランペットは体が小さくても大丈夫ですが 、腕力が無く楽器を持つのが大変な人は全長の短いコルネットから始めるのが良いと思います。

【歯並び】
 体格以上に上達の影響が大きいと思います。特に上の前歯が不揃いだったり凸凹していると、マウスピースの圧力に対して唇が食い込むために痛い思いをします。その意味で上の前歯2本が揃っていると有利です。八重歯があるとちょうどトロンボーン、ユーフォニアムのリムの外側の幅と一致し、唇がリムと八重歯に挟まって痛い思いをする事もあります。下の歯が上の歯よりも前方に出ていると主な振動体である上唇が使いにくくなり、高音域の演奏が困難になる事が多いです。ただ、バストロンボーン、テューバは下唇を振動させる事が多いのでうまくいく可能性が高くなります。逆に前歯がかなり前方に出ているとトランペットには不利になるケースが多いですが、トロンボーン、ユーフォニアムのようにマウスピースの直径が大きくなると影響が少ないようです。

【唇】
 極端に厚い上唇、一般的なトランペット、ホルンのマウスピースの直径である17mm近辺よりも厚い上唇の人は赤い粘膜がマウスピースよりも大きくはみ出てしまい演奏が困難であるケースが多いです。

【性格】
 トランペットは華やかに目立つ楽器ですから目立ちたがり屋は向いていると言えます。経験上ですが、活発な子、いたずらっ子、大声でしゃべる人、先生の言う事をあまり聞かないで手を焼くようなタイプはトランペットに向いていると思います。
 トロンボーンはベルが前を向いているという意味で、トランペットに似ている性格が合っていると思いますが、スライドというアバウトな方法で音程を変えるので几帳面さが必要になります。
 几帳面、細やかさでいうとホルンは高次倍音をコントロールする必要から最も大切な性格かもしれません。
 ユーフォニアムはバンドを美しく包む優しさ、おおらかさが大切ですし、テューバはさらにバンドを支える、他の人のために音を出すという使命感の強い人が向いていると思います。


♪初心者への指導上の注意点

 マウスピースの位置は上達に決定的な影響を与えますが、金管楽器はマウスピースが唇の表面に触れるだけなので位置を固定するのが難しいです。最初から楽器を使うと楽器の重さやサイズの関係で適切でない位置で音を出してしまう事がよくあります。マウスピースだけで1オクターブぐらい音を出せるようになってから楽器を使うのが合理的です。
 次に初心者が楽器を使った時におこりやすい問題点を、楽器別に挙げますから指導者はチェックしておいてください。

【トランペット】
 初心者には楽器が重く下を向きやすいので上唇の内側に当ててしまう事がよくあります。正面から顔に対して直角に近くマウスピースを当てるようにしましょう。

【ホルン】
 左右の手を対称に構えるとマウスピースが体の左側に向いてしまい、左に首を曲げる人が多いです。なるべくマウスピースが体の正面に来るようにしましょう。

【トロンボーン】
 肩の上に楽器を乗せてから吹こうとすると、多くはマウスピースが唇の下の方に来てしまい、下唇を突き出して吹く癖が付きやすいです。楽器を持ち上げて正面からマウスピースを当てるように心がけてください。

【ユーフォニアム】
 膝の上に楽器を乗せてから吹くとマウスピースの位置が下に来る事が多く、トロンボーン同様に下唇を突き出したり、極端な人は上唇の途中にマウスピースを当てる癖が付きやすいので楽器を持ち上げてからマウスピースを唇に当てるようにしてください。座高と楽器の位置を合わせるためにバスタオルなどを折りたたんで楽器と膝 の間にはさむなどの工夫をしてください。

【テューバ】
 ユーフォニアムとは逆に膝の上に乗せるとマウスピースが唇の上に来てしまい、首を上に折り曲げて吹くケースが多いです。初心者に限らず座高と楽器の高さを合わせるためにスタンドを購入したり、椅子を二つ使う、車の座席に使う滑り止めのシートを使うなどの工夫をしてください。

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