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アルトクラの魅力!

新井清史(Alto Clarinet)
2010.8.29

皆さんこんにちは。クラリネットの新井です。

いやぁ、毎日暑いですねぇ・・。どうしちゃったんでしょ?この暑さ・・
皆さん夏バテや夏風邪に気をつけて下さいね。

今回は、夏の照りつける太陽にもめったに当たらない地味~~な楽器と言われている「アルトクラリネット」の魅力をテーマにお送りしたいと思います。

まずは大まかに、アルトクラリネットってどんな楽器?

アルトクラリネットは名前の通りソプラノクラリネット(B♭・A管)とバスクラリネットの間に位置する楽器です。
バセットホルンというアルトクラリネットと似ている楽器があります。
近代になって合理化のために姿形が同じようになってしまいましたが、軍楽隊用に開発されたアルトクラリネットと違い、バセットホルンはクラリネットができた頃から存在していたと言われている、まったく別の楽器です。
アルトクラリネットは吹奏楽の中ではオーケストラのヴィオラ的存在で、主に内声を受け持ちます。実際の使われ方としては中低音を充実させるために他の楽器とのユニゾンが多いです。

大まかにこんな楽器です(かなり大まかすぎのような気が・・)

で、アルトクラリネットの印象というと「地味」「いまいちマイナー」「目立たない」「難しい」「聴こえない」「一生懸命吹いても異性にもてない」等など・・
う~ん、ほとんど良いこと無いですねぇ・・

ちなみに僕は高校時代文化祭の吹奏楽部のステージでは1部(クラシック)はクラリネット、2部(ポップス)はトランペットを吹いてました。
トランペットで「闘牛士のマンボ」のソロを吹くと文化祭の後、一週間はモテました♪
って、話が脱線。

で、一見良いとこナシの目立たないアルトクラリネットですが、とても大切な役割を担っています。それは「色」なんです。アルトクラリネットの音色が加わるとサウンドに微妙な変化が出るんです。

例えばクラリネットとバスクラリネットのオクターブのユニゾンとクラリネットとアルトクラリネットのオクターブのユニゾンでは音色は全く違うものになるし、クラリネット族のアンサンブルで3rdクラリネットとバスクラリネットがユニゾンで演奏するのと3rdクラリネットとアルトクラリネットがユニゾンで演奏するのとは全く違うサウンドになります。

画家が太陽を描くときにただ単色で描くのではなくて、白、黄色、オレンジ等の色を微妙に組み合わせて光を表現したり、シェフが料理をする時に塩と胡椒だけで味付けをするのではなく、隠し味を加えることによって何とも言えない絶妙な味を出すように、合奏にアルトクラリネットの音色を加えると絶妙な音色が出てくるんですね。

吹奏楽では、音量の変化に比べて、音色の変化を出すのってとっても難しいですよね。でもその音色の変化を出せるのがアルトクラリネットの大きな役割なんです。
音に深みと味わいを加えられるのがアルトクラリネットです。

これからはアルトクラリネットのことを「音色の魔術師」と呼ぶようにしましょう!
ちなみに尊敬するF1レーサーのアイルトン・セナは「音速の貴公子」と呼ばれてました。
って、また脱線。

ではアルトクラリネットを実際吹いてみると、これがまた実に難しい楽器なんですよねぇ・・

1.そもそもアルトクラリネットの音色がわからない
2.音程が悪い
3.音量が出ない
4.指の間隔が広くて速い動きが吹けない
5.他の楽器とのユニゾンが多く、自分が何の楽器を吹いているのか分からなくなる

等など、アルトクラリネットを吹いている皆さんは常にストレスが溜まっているのではないでしょうか?

このストレス解消方は、ストレスを含めてアルトクラリネットを好きになっちゃうことなんです。

アルトクラリネットの良い音って分からないし、どんな音を出せば良いのか分かりませんよね。クラリネットのようにCDがたくさん出ているわけではないのでお手本もないし・・なので、結論を言うと

「今あなたが出している音が一素敵なアルトクラリネットの音」

なんです。

大切なことは、自分が出している音に自信を持ってその音に磨きをかけることです。ロングトーンやスケールをたくさん練習しましょう。

音程が悪いのはアルトクラリネットの特権です。ですから弦楽器のように音程を自分で作ったり他の楽器に合わせたりする楽しみも出てきます。

アルトクラリネットは大きさの割には音量が出ない楽器です。なので無理に大きな音を出そうとしないで音を響かせるように吹くと存在感のある音になります。

指の間隔が広いので、速い動きが苦手です。でも、実は指の間隔の問題よりも速い動きに気持ちが行って、焦ってしまって息のスピードが落ちてしまうことで吹けなくなってしまうことの方が多いんですよ。「難しいな」って思ったら息をしっかり入れることが大切なんです。

で、合奏すると、ある時はアルトサックス、またある時はテナーサックス、トロンボーン、ホルン、ユーフォニアムといつも他の楽器とユニゾンで「この楽器もしかしてクラリネット族ではないんじゃないか?」って思いません?
これも考えようで「つまんないの」って思ったらそれで終わり。いろいろな楽器と一緒ということはそれぞれの楽器が持っている音質感や発音、ニュアンスを真似して勉強することができるんです。これはいろいろなジャンルの音楽を演奏するときにすごく役に立つんですよ。

音楽は、目立たないパートほどアンサンブル能力が要求されます。ですからアルトクラリネットを吹くということはとてもすごいことなんです。
バッハは合奏の時にヴィオラを担当して、和声の中心にいて両側の音を聴くのを楽しんだそうです。

アルトクラリネットはとても難しい楽器ですが、バッハがヴィオラを弾いたようにいろいろな音を聴きながら一緒に演奏するのを楽しめる楽器です。
一見地味な楽器ですが、音の豊かさや微妙な陰影で音楽の音色をコントロールして内声を豊かにできるのですから、アルトクラリネットって不思議で魅力のある楽器ですね。

アルトクラリネットは高価なので、なかなか演奏に加えることは難しいですね。
でも機会があったらぜひ加えてみて下さい。

秋はもうすぐです。水分を十分に取ってこの猛暑を乗り切りましょう!

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